植物時事ニュース
植物工場の野菜、下からLEDの光を当てると老化抑制+光合成促進効果
千葉大学は、植物工場の推進や発展に繋がる新たな植物栽培システムとして、上方照射を用いて葉の老化を抑制する栽培技術を開発したことを12月7日付けで発表した。
今回開発された新システムは、植物体への上から下に向けてのLED照射をする「下方照射」のみならず植物体への下から上に向けてのLED照射する「上方照射」を加えるというもの。
これまでは光が当たらず「老化葉」が発生
室内栽培で天候に左右されない葉菜類の安定供給を期待されていた植物工場だが、産業化に至るまでの課題の1つに「老化葉」が挙げられていた。植物工場は高密度に植物を栽培するため、葉が複雑に幾重にも重なり、外側の葉まで光が届かず、外側の葉の老化が進行してしまうのが常だった。
これまでも出荷前に老化葉を取り除く作業に膨大な時間と労力がかかっており、植物工場においては、作物の高効率生産・高付加価値を実現する栽培法を確立することが重要な課題であった。
トリミング作業を減らし、収量もアップ
そこで、同研究では外側の葉にもLED照射を当てられるよう「上方照射」を設置したところ、外側の葉の老化を抑制する効果が見られた。最終的には廃棄率の低減と収穫量の増大につながった。
また、下方照射では光が外葉に届かないため、外葉の炭素収支が「マイナス」であっが、上方照射することによって外葉にも光が届くため、純光合成速度が「プラス」になった。上方照射法は外葉の老化を抑制するのみならず、外葉の純光合成速度を速め、外葉の成長をうながすことが実証された。この技術の導入により、出荷する際のトリミング作業(老化葉を取り除く作業)を削減することができ、時間と労力の節約になる。
新規栽培システムの開発
同研究行った同大学環境健康フィールド科学センターの矢守航助教らは、今後も環境負荷を最小限に抑える技術開発を進めていきたいとコメントした。なお、同研究の成果は国際誌であるFrontiers
in Plant Scienceに掲載された。
2015年12月15日