植物はおよそ60種類の元素から成り立っています。このうち16種類の元素が不可欠の要素で「必須元素」と呼ばれています。これらは、生命維持に必要で、みずからの体内で合成することができないか、合成できも絶対的に不足する為に、外部からの補給が必要なものです。
「必須元素」は、大きく多量要素と微量要素に分かれています。
多量要素とは窒素、リン、カリウム、水素、炭素、酸素、カルシウム、マグネシウム、硫黄の9元素です。水素、炭素、酸素については大気中の二酸化炭素を葉より、水を根より吸収して、光合成によって炭水化物に変えて利用しています。窒素、リン酸、カリウムは多量元素の中でもっとも消費の多い元素で、肥料の三大要素と呼ばれています。
微量要素はモリブデン、銅、亜鉛、マンガン、鉄、ホウ素、塩素の7元素です。これらの必要量はごく微量ですが、植物にとって不可欠な必須の元素です。
☆多量要素が植物に与える生理作用☆
窒素(N):リン酸やカリウムは与えすぎても作物の収穫量は落ちませんが、一般に施肥が多いほど収穫量が上がります。しかし、窒素の場合は、多く与えすぎると植物は多汁化して軟弱になっていまい、地上部の生育が根の生育を上回り、倒れやすくなってしまいます。また、病気や害虫の被害を受けやすくなります。
・細胞の分裂・増殖に必要です。
・根、葉、茎の発育、繁茂を促します。
・養分の吸収、同化作用を盛んにします。
リン酸(P):窒素、カリウムとともに肥料の三要素であり、与える量はほぼ等しいものです。しかし、リン酸の吸収量は窒素、カリウムの1/5ぐらいです。
・作物の生長を早めます。
・根の発育を促し、発芽力を盛んにします。
・分けつ(株わかれ)の数や根、茎、葉の数を増やします。
・子実の収量を高め、品質を良くします。
カリウム(K):窒素同様、植物体中における含有量が高い元素です。
窒素、リン酸が生育初期に吸収されるのに対して、カリウムは生育後期まで吸収されます。カリウムは植物の水分利用や炭水化物合成に果たす役割が大きく、病害に対する植物の抵抗力を増加させます。カリウムが欠乏すると、植物の成熟は遅れ、低温害や病害を受けやすくなります。
・水分の蒸散作用を調節します。
・根の発育を早めます。
・開花、結実を促進します。
・日照の不足を補います。
カルシウム(Ca):窒素、リン酸、カリウムとともに肥料の四要素とも呼ばれることもありますが、三大要素とは異なり、必要量を満たすというよりもむしろの酸度を調節する役割が大きい元素です。このため肥料の三要素に対して「間接肥料」と呼ばれることもあります。カルシウムは、植物の細胞分裂組織の生長、特に根の先端や新芽の発育のために不可欠のものであり、欠乏すると植物の生長点に障害が現われます。
・植物の細胞膜を作り、また、これを強化します。
・有機酸などの有害物質と結びついて、これを無害化します。
・葉緑素の生成、炭水化物の移動に必要です。
・根の発育を促進し病害に対する抵抗力を強くします。
・植物に硝酸態の窒素を良く吸わせ、加里、苦土の吸収を調整します。
マグネシウム(Mg):葉緑素の構成要素としてすべての緑色植物に必要なものです。また、植物体中でのリン酸の移動にも重要な役割を果たしています。
・葉緑素を構成する元素です。
・植物の新陳代謝を盛んにします。
・蛋白質、脂肪の合成に必要な元素です。
・植物の体内のリン酸の移動を助けます。
イオウ(S):アミノ酸、タンパク質、ビタミン類の構成元素です。イオウが欠乏しても、植物全体の生育にあまり異常は認められないとされていますが、中~上位葉の葉は下位葉よりも色が淡く、はなはだしいときは淡黄色になります。下位葉は健全なのがイオウ欠乏の特徴です。
・タンパク質の合成に必要な元素です。
・含硫化合物を作ります。
・葉緑素の生成を助けます。
微量要素:ほとんど欠乏することはありません。